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展覧会での作品撮影についての考え方(大阪市立美術館の場合)


おことわり:
以下の内容はあくまでも大阪市立美術館としての現段階でのスタンスになります。対応や考え方は各美術館や博物館によって異なります。「あそこは〇〇だから、ここも〇〇すべきだ!」という画一的なご判断は自由だと思いますが、施設への強制はどうかご遠慮ください。では、本文をどうぞ。



ご来館者さまからのご要望のなかで、多いもののひとつに「作品を撮影させてほしい」というご意見があります。大阪市立美術館では、作品撮影の可否については展覧会ごとに判断していますが、基本的には以下の観点から撮影をご遠慮いただいています。


<展示作品が館蔵品ではない>
→ご所蔵者さまからお預かりしている寄託品や、展覧会の期間中お借りしている作品などは、ご所蔵者さまのご意向に左右されます。また、館蔵品の場合でも寄贈主さまのご意向もあり100%OKとはいえない状況もあります。大阪市立美術館の場合、自ら購入した作品が多くはない、という事情もあります。


<仏像など礼拝の対象となっているものを撮影するのは失礼だとする考え>
→仏教美術である前に、礼拝の象徴として制作された以上、真摯に向き合う必要があると考えます。余談にはなりますが、展覧会室内に展示している仏像の前で、手を合わせられている方もいらっしゃるということを、心の片隅にとどめいただければ幸いです。


<日本のスマートフォン、携帯カメラの機能上の問題>
→残念ながら、日本国内の仕様ではシャッター音がデフォルト(標準設定)という特殊な事情があります。(そもそもそういう行為の目的で使うケースがいかがなものかという問題はさておき)このシャッター音が不快であるとして、撮影行為を嫌うお客さまもいらっしゃいます。



ほかにも美術品自体の問題など挙げればキリはないのですが、以上の3つが、撮影をご遠慮いただく大きな理由としてあげられます。「展覧会で気に入った作品を撮影したい」という気持ちは痛いほど理解できるのですが。。。


皆様からのご指摘のとおり、海外の作品や現代アートを中心として、撮影可能な展覧会が増えているのも事実。ですが、海外の美術館すべてで撮影可能になっているわけではないことをご理解いただければ幸いです。また、現代アートの作品の中でもアーティストの意向によっては撮影禁止の作品も存在します。冒頭でも述べましたが、「あそこは〇〇だから、ここも〇〇すべきだ!」という画一的なご判断はご自由ですし、お気持ちは理解できますが、強制はどうかご遠慮ください。


あくまで現時点でその作品を有しているのはその美術館や博物館かもしれません。そうかもしれませんが、過去から未来へと、綿々と続く長い歴史の中で見れば、たまたま現在、作品を預からせていただき、展示させていただいているだけ。時代が変わり、作品の役割が変わった(日常使われるものから目で楽しむものに など)からといっても、やはり作品が作られた時代に想いを馳せ、真摯に向かい合う姿勢は欠かせないのではないかと感じます(撮影することに真摯な姿勢が欠けているといっているわけではありません)。


とはいえ、可能な限りみなさまのご要望にお答えしたいとも考えており、2020年に開催した展覧会の中でも数点は撮影OKとさせていただいておりました。


もちろん、美術館としてのさらなる努力も必要不可欠だと認識しています。大阪市立美術館では限られた予算の中で作品のデジタル化も(遅ればせながら、少しずつですが)進めております。すぐにではありませんが館蔵品や寄託品をはじめ展覧会以外でも楽しんでいただけるようなコンテンツも、と検討しています。


以上、作品の撮影について大阪市立美術館の姿勢をご紹介させていただきました。どうか趣旨をご理解いただき、美術館や博物館を楽しんでいただけますよう、ご協力のほどよろしくお願いいたします。



撮影禁止の作品は、思い出として心の中に刻み込むようにご鑑賞いただければ幸いです。

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